人にはうまく話せない

大阪でいろいろやってる三十路オタクです。日々の活動から、人前ではうまく話せないこと、話すまでもない些細なことを書いていきます。

【映画】美しいおとぎ話

シェイプ・オブ・ウォーター(オリジナル・サウンドトラック)
  
公開終了直前に、観てきました。
  
予告編に遭遇した時の第一印象は、「デル・トロ監督、パシリムとは違うフェーズで、またまたオタク心を刺激しそうな作品を作ったんだなー」。
その青く美しい映像とストーリー設定は、やはり一介のオタク(ミーハー)としては気になったものの、「ホラー・サスペンス・スリラー」あたりがオールNG、そしてもちろん『ウルトラセブン的な不気味さ』も苦手な私。本作は、そのあたりの地雷がどれか踏まれる作品なんじゃないかと感じ、当初は映画館まで観に行くつもりはありませんでした。
  
ところが “(私的には)まさかの” アカデミー賞獲得、そして周囲の人たちからの高評価(nyi-maに来る人、映画いろいろ観てる人率も高い)、あと、ホラー的な演出はそれほど無いから大丈夫だよというアドバイスのおかげで、なんとか駆け込み鑑賞してきました。
  
確かに、恐怖を煽ったり唐突にビビらせるような見せ方はなく、私でも大丈夫な作り。
とはいえ、鑑賞中はそのクライム・サスペンス要素にずっとひぃひぃしていました(ストリックランド氏、最初から最後まで存在感ありすぎぃ!)。あの最後の銃撃からの結末も、まずは「終わった・・・ジャイルズは死ななくて、よかった・・・」という安堵が先に立ったくらい(苦笑)
  
その後も1日、ずっと作品を反芻していますが、まだ、なかなか自分の中の感想がうまくまとまりません。
エンドロールを眺めている時には、「ああ、美しいおとぎ話だったなー!」という高揚感があったのですが、帰り道ではじわじわと悲しみが広がってきて。なんでかなーと考えたら、この作品、物語を通じて、登場人物みんな、何かを「失って」終わるんですよね。
あのラストのイライザの姿を、現実に起こったことと受け取るなら、「彼」とイライザだけは、お互いを得たのかもしれないけれど。でも、彼ら自身が姿を消してしまった。
それぞれが、自分が決断したことをまっとうしているので、物語自体は悲劇的だとは思いません。
こちらはその結末を見届け、受け止めて、上質な悲しみに浸っている・・・そんな感じ。
  
  
そしてまたこの物語は、ピュアな・・・というよりむしろ「プリミティブな」ラブストーリー。愛し合うことは描かれても、理解し合うことは描かれません。
言葉を話せない主人公イライザが劇中で唯一、(空想の中で)口を開いて高らかに叫ぶのが「あなたは知ることはない こんなにも想っていることを」という歌。それを、本人を前にして、歌いかけます。
イライザは、「彼だけがありのままの私を見てくれる」と感じながら、「理解し合えない」こともわかっている。
それでも私は、あなたを愛している。。。
  
観ている側としては、「いや、ジャイルズやゼルダも十分にイライザのことを見てくれているじゃないかー」と思ったりもするのですが、イライザの気持ちは、イライザにしかわからない。ジャイルズもデリタも、そして私たちも、イライザが「彼」をあれほどに強く愛して求める気持ちにはおそらく本質的には共感できない。けれど、寄り添って、応援することはできます。それは、イライザのためであり、彼ら自身のためでもある。そんな、周りの人たちの背景や決断も、過不足なく適度にきちんと描かれているおかげで、私たちも彼らに共感し、イライザに寄り添うことができます。
  
一方で、ラブストーリーには愛し合う主役たちへの「共感」こそが求められる場合も多いわけで、そういったものを期待して観た人だと、イライザの愛の形、「彼」の愛の形には、置いてけぼりになってしまうんじゃないかな。そのあたりで、人を選ぶ映画ではあるでしょう。
私自身、想像していた“異種間ラブストーリー”とは違ったというところに、戸惑いはあります。
こんなにも、お互いに一方通行の愛もあるのか、とか。
愛し「合う」ってどういうことなんだろう・・・とか。
今さらながらに考えてしまいます。
  
“ 二人は出会い、恋に落ち、海の底で、幸せに暮らしましたとさ。”
お姫様と王子様の、出会いから愛の成就までが、シンプルに語られる・・・それ自体も、この作品の「おとぎ話らしさ」の一要素かもしれません(実際、本作の導入と締めはジャイルズの語りで構成されていますしね)。
  
  
というわけで、いろんな要素が詰め込まれた「美しいおとぎ話」です。
機会があれば、ぜひご覧ください。
私にもまだまだ気づいていない、見えていないところがあると思うし、人によって、感想や捉え方も、けっこう違うと思います。
刺さる人、刺さらない人、それぞれの理由に納得しそうな気がする私です。あなたが愛をどういう形で捉えているかが、見えてくるかもしれません。
  
  
映画では描かれていないことも書かれているという、小説版も気になるなー。

シェイプ・オブ・ウォーター (竹書房文庫)

シェイプ・オブ・ウォーター (竹書房文庫)